漫画「美味しんぼ」での被曝表現について大きな話題になりました。
福島を訪れた主人公が鼻血を流し体調不良を訴えます。地元の元町長がそれを放射能によるものだと発言しています。 ちまたでは、「この症状が被曝によるものか」「真実なのか」が取り沙汰されています。専門家などは因果関係は無いとしていますが、被曝に関するデータが不足しているため断定は難しいようです。漫画の作者は「長期取材により内容には自信があり、責任は自分が取る」と発言しています。
昨今、「責任が不明確」「責任逃れ」を追求される政治家や経営者が多い中、立派な覚悟とも受け取れます。 しかし、ちょっと待って下さい。この漫画表現に対する問題は、表現が真実かどうかだけが問題ではありません。真実とは関係なく蔓延するのが風評被害です。これまでも真実とは関係なく大きな風評被害は起きてきました。作者には表現の自由があります。
しかし、その表現により起きてしまった問題には責任が伴います。今回の件で責任を取らなければいけない問題は「風評被害」についてです。
恐らく、表現の内容に不備があった場合の責任のとり方として、「連載の中止」や「作家活動の中止」を想定してると思われます。
しかし、それはあくまでも作家自身としての個人的な「けじめ」であって風評被害にたいする責任とは無関係です。 風評被害により損害を被った全ての人達に、その損害に見合うだけの保障や謝罪をしなければなりません。 しかし、そんなことが一個人の作者ができるはずもありません。つまり、自分の与えられた表現という権利は行使したけれど、責任は取れないのです。 人は与えられた権利を行使することは認められても、その言動には必ず責任が伴います。
例えそれがネット上の匿名のつぶやきや投稿であっても同じです。 最近では少し下火にはなりましたが、店舗などでの従業員による不適切な投稿が問題になりました。冷蔵庫の中に入ってみたり、商品を粗末にあつかったり、芸能人の来店をつぶやいたり。 この様な問題が騒ぎになるまでは、どこの企業でも「冷蔵庫には入るな」「プライベートを暴くな」などは一々マニュアル化していなかったと思います。一般的には「まさかそんなことはしないだろう」と思っているからです。しかし、「権利と責任」の関係がわかっていない従業員は、その「まさか」を行います。 昔からこの様な事例はあったと思います。しかし、現在は「ネットの普及によりたった1つの問題が大きく拡散してしまいます。事業全体を揺さぶることにつながってしまうのです。
このリスクを回避するために、あらゆるケースを想定してマニュアル化していたのではキリがありません。やはり、従業員自体に「権利と責任」の関係を指導していくしかありません。
そのためには、名ばかりの役職や、名ばかりの担当者にするのではなく、「全ての従業員一人一人に「役割を明確にし、それに伴う責任も明確にする」ことだと思います。
このことが従業員のレベルアップにつながると同時に、生産性の向上にも直結するはずです。